神経症インタビュー集

各種セラピストや精神科医・神経症で悩んでいる人・克服できた人にインタビューを試みた。忙しい中応じてくださった方々にこの場を借りて感謝したい。

 

           

 

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DREAMART 神経症克服プログラム  不登校克服プログラム
東京・大阪など
岩波氏
神経症に関する対談(完全版)
不登校・ひきこもり問題に関する対談(完全版)

岩波氏は、神経症から不登校・ひきこもりまで、心の悩みを抱える人に絶大な支持と熱いファンがいるカリスマ・セラピストだ
東京と大阪などででDREAM  ART研究所をやっている。1946年生まれ。
私がお会いした中でもっとも興味深く、能力、エネルギッシュさがずば抜けていた人だ。
セラピストとしてではなく、一人の岩波氏という人間にとても惹かれた。
なるほど、人間としての大きさや魅力、鋭さゆえに評価されていると考えれば、それも納得がいく。
若輩の私にも 様々なことを教えてくれ、その知識の深さと経験値の大きさにただただ圧倒されたことを今でも鮮明に覚えている。
私もある種の才能をもつ人とたくさん仕事上会ってきた。
その中でも図抜けていた。
みんなたくさんの長所や能力を持った人だが、「違い」を見せつけられた。
私にとって、このルポ、インタビュー、取材で一番栄養になったのは、氏との出会いかもしれない。
だからこそ日本中にファンがいるのだろう。
わざわざ沖縄や北海道から、岩波氏に会うために東京や大阪に通ってきている。セラピーが受けられる限られた時間のためにだ。
セラピストの枠に収まりきらないパワーとスケールの大きさ、カリスマ性を感じた。
氏との最初のインタビューを掲載した。

岩波先生のインタビューの完全版を読みたい人はこちら

━岩波先生のやられているセラピーやプログラムが、ものすごい支持を得られていますが、その理由はなぜだと思いますか?

そうですね、理屈ではやっていない、理性や理屈でモノを拾うことをやっていないからがまず一つだと思います。
「悩みはこうあるべきだ、こんな風な考えをしろ」「この考えならいける」というのは神経症や心を扱うどの本にも書いてあります。
それにカウンセラーの言葉にも出てきます。
でも、それを読んだり、アドバイスを受けて良くなることができれば、そもそも悩みに陥っていないわけですよ。
うちに来る人はみんなものすごい努力家で、いろんなことを試してみたり、本を読んだりしています。
ほんとうに優秀な人ばっかりで、一番自分ができが悪いなと感じます。
でも、心の悩みでどうにもならなくなって動けない。
人間の心は、理屈じゃなくて、 生の実感として「ああこんな感覚なんだ、こう人生はいけるんだ」という体感の世界から、限りなく目的に近づいていった方がものが見えます。

━目的というと、この場合は神経症改善ですね

そうですね。理屈だと、決してよくならないどころか、むしろ悪化するんですよ。知恵や理屈が肥大化してどうにもならなくなってね。自分の場合は小細工もしないし、正面からぶつかっていくといった感じですから、逆に通ってきている人にとって、信頼しやすいんだと思います。

━たしかにカウンセラーでも医者でもどこかでごまかしたり、小細工したりして、患者の信頼を失っていますね。

セラピストに必要なのは、そこじゃない生の実感というものだと思いますね。理屈じゃなくて本物の「あ、これだ」という実感ですね。他の人と比べれば、そこはあるとは思います。

━こうやってインタビューさせてもらっても、全然違う、本当に自分に正直に生きているという自信を感じます。神経症の人がいつまでもジプシーのようにいろんなところに通って効果が出ない状況ですよね。そして岩波先生のところに最後に来るという形が多いと聞きました。じゃあ、今の日本のカウンセラーは力不足なんですか?

カウンセラーは世の中に絶対必要な職業だし、自分ももちろんカウンセリングもする。
でも、理屈のカウンセリングと生の体感としてのカウンセリングがあって、カウンセラーが一般的に言うとしたら、「こうですよ、こうあるべきですよ」という神経症が良くなるための定番があります。でも定番じゃ良くならないのは悩んでいる人は皆経験しています。

━定番というと、いわゆる教科書的な当たり障りのないとゆうものですね

悩みはそんな甘くないし、定番じゃ良くならない。少なくとも神経症の段階になってしまうと。定番を壊して、定番じゃ治らない、そうじゃない、ということからスタートをします。そこからうちは出発しています。
悩む人は定番でものを考え突破しようとして、いろんな理屈で頭で考えても何してもよくならない。本もたくさん読む、催眠療法とか医者にかかったり、薬物療法をやったりする。でも、結果としてモノ、殻を破れない人が多い。それはもうすごい知識を持つ人が多くて、カウンセラーの知識を上回っている時も多いですよ。

━悩んでいる人は、実際に悩みを体感しているから、実質的には神経症に対して、普通のカウンセラーや医者よりも詳しいかもしれませんね

でも、知識があっても結局は何にもならないし、じゃあ、そんな知識があったら、うちに来ることもないわけで・・・・必要なのはそこじゃないんですよ。
答えが出ない人が良くなるためには、これまでの考えを使ってはいけないと思う。どうしても定番を使っても使い切れない矛盾が人の心にはある。それを原点から神経症克服のプログラムを考えていくとスタートラインの形が変わってきます。

━たしかに人の心ほど矛盾したものはないですね。悩んでいる人はいっそうそれが顕著ですね。強く願っているけれど、どうしてもそれができない。愛しているのに憎い、憎いけれど愛しているというものは一番典型的な例ですし。

だから理屈は通用しないし、感覚でしか人は動かない、変わらない。そこのところから考えています。でもどうしても、悩んでいる人は理屈や定番にすがってしまう。それはしょうがないんだけど、でも変わるためには、とても距離が遠くなってしまう。本当に変わるのは、そこのところの定番を壊して、新しい角度や視野からものを考えて、体感として身につけていくことですね。

━その斬新な視点というか、逆からの発想というか、そこが指示を受けている理由の一つかもしれませんね

人とは違うなという自負は持ってます。

━全国から問い合わせが多く寄せられているようですが、悩んでいる人、通われてくる人は何を求めているのですか?

とりあえず、悩んでいる人はほとんどの人は、楽になりたい、助かりたい。
治したいのはいい、とにかく安らぎを求めたい人も多くいます。
でも、それまで、あがくばかりで安らぎを求められない。
安らぎが求められるものがうちにはありますから、そこのところも求めていると思います。
心とか悩みは努力をしないからよくなるという矛盾したものがあるんです。
努力をするからドツボにはまる。でも努力しないことは出来ない。とても頑張ってヘトヘトになってしまう
悩みの特性として、何か踏ん張って変わらなきゃ、という頭が本人に強いんです。それを排除すること自体が恐怖に近い。
排除したときに何をするかが一つのポイントですね。
そこに答えが出るものじゃないかと思いますね。

━努力をしないことを悩む人は、結局「努力しないことに努力してしまう」ことはないですか?

どうしても長い間やっているとそうなってしまいますね。
いわゆる自然体ができない。
リラックスしようとしても、自力では余計力みが入って、体がカチカチになってしまったりする。
でも、そうじゃない、理屈じゃなくて、リラックスや安らぎというのは体感の世界だから、もし支持を受けているとしたら、そういうリラックス感を深く味わえるところもあると思います。

━いわゆるトランス状態というやつですね

体として、脳として、無意識としてリラックス感を体に覚えさせるにはこれに勝るものはないですね。理屈の世界じゃないから、距離がすごく近くなる。

━距離というと、リラックスを覚える距離ですか?

まあ、そうですね。感覚の世界だからこそできる。

━人が変わる、行動を起こす、というのは、感覚の世界ですからね。悟りとかもそういうものでしょうし。
他のセラピストとご自分では何が違うと思いますか? 

他の人は、過去の古い遺産のコピーみたいのをやっていると感じます。
それでいて、やっている本人たちが、患者が良くなるとは考えられない。でも努力したいような現状がたくさんある。
神経症が良くなることが考えられないという人に、劇的な効果という答えは出せないと思う。
悩みは大きく、いろんな症状があります。
その症状を壊すために、暗示を与えたり、「こうあるべきだ、こうしなければならない」とか言う。
でも悩んでいる人はそれが出来ない。それが出来たら苦労しない。
でも、 なぜできないんだ? となると長い間のトラウマがある。
だから「トラウマの処理をしなさい」という。
でも、その処理ってどうするの?となる。
一般のセラピストやカウンセラー、医者にしてもそうですが、「人は過去こういう体験をしているからこうなんですよ」と言います。
それじゃあ、その体験がどうして今の苦しい現状結びついているのかはっきりリンクしないことが多い。
リンクしないものを頭でこねてやっても、脳は納得しない。

━理屈はわかっているけれど、心がついて行かないとなるでしょうね。

そう。脳を納得させるためには、言い換えれば、無意識ですが、長い間の複雑なトラウマは確かにあるけれど、確実に過去と現在をリンクさせるための手法をうちではとっています。
それをすると、心のなかで、「こうあるべきだし、こうなることがこういうふうに今の悩みにつながっている」と現実をリンクさせることができる。肯定させることができます。
ただ 肯定できたとしても、頭でわかっていても、体は神経は変わらない。
じゃあ、頭のどこの部分でわかれば肯定できるのか、メスを入れるのが、うちのプログラムです。

━本当に心の底から肯定できた時に、悩みは急速に崩壊するといいますが、やはり理屈の世界では届かないものですよね。
一般のセラピストやカウンセラーの人には、力不足な部分があるということでしょうか。

力不足と言うよりは、それが定番なんだと思います。さっきも言ったように。でも定番では矛盾した心の世界、無意識の世界にはメスが入れない。

━ メスというのはおもしろい表現だと思います。 その華麗なメスさばきを脳の奥底に届かせることができるのが、岩波先生ということですね。

そんな褒めてもらっても(笑)。
ただ、メスを普通の頭にいれても、理性に働きかけるだけで何にも従来のものとは変わらない。
無意識とか意識下とか、深層心理とか言っていても、現実的にそこまでメスは届かないんです。
完全トランスという限界のトランスがあって、私もそれを徹底して研究して来て、そこが支持を受けている一つだと思うんですが、その状態に入らせて、そのとき暗示やある働きかけをすると、ある脳が作動するようになる。

━無意識が表面化すると言うことですか? 完全トランスと暗示などで。

うん。トランスは、無批判、ガードがなく、「これしかない、これで当然だ」という理性をカットされた状態で、矛盾している心を、それをすんなり受け入れさせる。リンクさせる。それを現実的に作り出せるから他とは違うものがあると思います。

━その状態が「メスが届く」と言われた状態ですね。
暗示というと、悩んでいる人に限らず、燃えている人でも、つねに自己暗示をかけて、気を奮い起こそうとしています。
悩む人はマイナス暗示にすぐかかりやすい。でも、燃えている人はプラス暗示にかかりやすいですよね。
プラス暗示を悩んでいる人にかからせるのはかなり困難な感じがします。
悩むと「暗示の意味はわかっているけれど、どうしてもそう思えない、それしかない!」と思うことができない。
だから、理屈ではモノは治らないし、 感覚でわかるしかないんです。そのためのメスですね。
たとえば、トラウマがあったとします。トラウマがなぜ起きるのか、環境、親のしつけとか取り巻きとかいろんな要素が存在する。
その枠の中での経験しかないのが、悩みに陥りやすい人です。
「気の病みすぎだ」「生き生きとしなさい」と言っても、過去の体験の中に、当人は生き生きと出来ないし、体験を持っていない。
「 どうして生き生きと出来るの?」と悩む。
過去の流れで、周囲を常にチェックすることしか出来ない状況になる。
いくら頭を振り絞っても、生き生きした経験がないなら、いきなり生き生きとできるわけがないですよ。

━そうですね。「生き生き」は理屈・理性の世界じゃなくて、岩波先生が言われるように感覚の世界ですから

だから 感情と心が重要になってくるんです。ハートですね
ガードがとれて、人生を走ったときに、初めて何かをつかめるものがあるんです。
自分はそうして走ってきたし、また良くなる人もそれができます。
つかんだときに、今度は快適に生きている人、いろんな体験をしている人、いかに短い時間にそれを体験するか、学習するかに大きなポイントがあるわけです。

━感覚で「生き生き」という体感することで、過去にそれがない人でも経験値ができる。

経験値があるから、「生き生き」が余計次にできるわけです。出てくるんです。もう存在しているんだから。そして、どんどん積み重ねていくことができる。なぜできるかというと、感覚で脳が、無意識がちゃんと覚えているからです。

━自信という感覚、感情も同じ理屈ですね。自信のない人がいきなり、成功者のように自信を持つことができるかというと、絶対不可能だと思います。自信というかけがえのない経験値を積み重ねていって、強い人間になれる

うちでは、自信がない人、持ったことがない人でも、 そこの部分を積み重ねていけるカリキュラムをプログラム持っています。悩むための生き方がどういうモノか、その人が悩まない生き方、体に脳にしみこませるように、脳に入れ込むのがポイントですね。自分を見て、感じとってくれればとも思いますし。

━本当にそう感じます。岩波先生に会うだけでもいい影響を悩んでいる人は受けると思いますよ。私も今受けていますし。

遠くから通ってくる人が多いんですが、問い合わせの時に、よく言うんですよ。俺の顔を見に来るだけでも来た価値があるよって(笑)

━海外からそれで来ている人もいるんですね。ところで、海外の人から興味を持たれているわけですが、欧米の人でも薬物療法や精神分析に限界を感じているんでしょうね。

いまは先進国はスピードが速いですからね、とても増えていると思います。
フロイト以来、精神分析が幼児期の何だとか、性のなんだとか、普通なかなか今の自分の悩みにリンクしない。「子供の頃のこれが、あなたの今ですよ」といわれても「どこがリンクする?」となる。
夢判断しても、蛇の夢を見たのがどうこうと言っても、都会に住んでいる人は、蛇も蛙もみたことない人も多い。そうすると判断する部分の素材と現実的にそれが存在しない素材と社会的背景が変わってきている。いまだにそれをやっているナンセンスなところが多いんです。
精神分析は必要ですが、的はずれだと意味がない。ここでやるのは、現在の苦しい神経症という状況から逆算して後戻りしていってから、トラウマを発見させライン上に入れ込みます。
ライン上にのったものが、なぜそういう神経症の感覚に起きなければならないか、一つ一つ、何百という観点から、全部分析処理していって、脳が納得するようにもっていかせます。そこでも新鮮さがあるんだと思います。

━東洋的な価値観が欧米で見直されていますね。また発見されていますね

海外には日本の禅が輸出されています。瞑想も海外で受け入れられています。欧米な薬物療法、科学療法、対症療法で安らぎを求めようとするが、不可能だから、非科学的なものが、実際には心理学的に理にかなったものなんだけど、存在感が出てきます。瞑想や禅は、脳が作り出すある意識の世界、体感の世界だったりします。
それを科学的に大脳生理学的にも心理学的にもハイスピードで、つくりあげる技術を持っているから、そこが海外で強く支持されているんだと思いますよ。特に欧米の人はとても価値が出ると思います。

━これから海外に積極的に紹介することはありますか?

ここ数年の間にうちのシステムのプログラムをどんどん紹介していきたいですし、たくさんの人に知ってもらいたいと思ってます。輸出したいと考えています。むこうにとって、すごく新鮮に映るのは間違いないと思います。すごく興味を持たれていますし、支持されることはわかっていますから。

━カリスマとか天才的だと呼ばれていることについてどう思われますか? 私も実際に対面して強くそう感じます。

カリスマとは自分で思ってないし、何とも感じないですね。でも、もしそういう人がいれば、自分は徹底しているし、持論を持っているし、オリジナルの独自の解決プログラムを用意しています。一般からすれば、無意識の心を説得するパワーと技術があるからだと感じてくれているから、「すごい、パワーがある」となる。その辺だと思います。

━では、なぜ神経症の人は、いつまでも悩みをひきずりつづけるでしょうか

前にも言ったと思いますが、どうしても過去の経験値からものを考えてしまう。
過去の自分が体験したものからしか考えられないのが人間です。
中には、悪い買い物、大失敗の買い物をしてとことんまで落ち込む人もいます。
でも中には、悪いものを買ってしまったけど、かえって良かったという都合のいいように解釈してとりくめる人もいます。私はそうなんだけど、悩む人は前者です。過去に何らかの恐怖体験があるから、その観点からでしか物事を見られなくなるということが一個だと思います。
人間は生まれたときは真っ白です。遺伝子はもらっているけれど。では、なぜ悩むのかというと、環境になります。人間・他人・親という存在が一番の要因ですね。
そこに恐怖を与えるような人間がいると、どうしても顔色を見たり、ぴりぴりしたりする。
なにもしなくてもいいようだとそもそも悩まない。
いろんな風に積み重なって、ある種の悩む回路が出来ます。
自分の弱点・悩みがそうやってできてしまった時、その環境でマイナスの学習しているから、新しく発想したり、違う次元でものをみることが距離が遠くなってしまうんです。その世界からでしか考えられないから、過去の遺産からでしかモノがみれないから、新しい観念、新しい世界を植えつける状況がなくなってしまうから、結局、悩み脱出のチャンスがなくなり、ずるずる悩み続けます。

━例えば、自信が喪失している人は、自信を喪失してしまうんじゃないかというおびえの過去の遺産からでしか物事を経験できない。だから余計悩んでしまうということですね。

その悪循環はとても強力で、普通には手におえないですね。でも、そこのところを考えてプログラムをつくっています。

続く

岩波先生の続きを読むにはこちら

 


催眠療法(大阪)

長谷部清隆氏

長谷部氏はベテランの催眠療法士で、大阪で療法を行っている。いままで大勢の人が長谷部氏のセラピーを受けている。
催眠療法とは何なのか? よくなるためにどうすればいいのか? インタビューしてみた

━この道35年ですが、そもそもこの道に入ろうとしたきっかけは何でしょうか?

私自身、ずいぶん若い頃は神経症で苦しみました。自律神経のバランスが崩れて、まあ、それは親とかまわりの環境でそうなったんだけどね。父親の目がずっと私の行動を見張っているような感じで、もう体ががちがちに緊張してしまってね。何をするにも息苦しかったり、もう何度も死のうと思いましたよ。心が平穏でいることはなかったんだから。もう地獄でしたよ。だから、なんなんだ、この状態は! と必死で理由を探しましてね。精神科医に相談に行ったり、薬をもらったり。でも、薬は怖いな、と思った。だから、他に何があるんだ? となったら催眠療法があった、と言うわけ。

━催眠療法で症状が治ったんですか?

いや、こういっちゃ怒られるけれど、どこも駄目だった(笑)

━催眠には入れたんですか?

 なんか、あやしいところに行ってしまってね、もうくたばりそうなおじいちゃんの先生で。催眠って怪しいな、と来て損したとほんとうに後悔したよ。自分が催眠状態に入っているのかどうかもわからない。だから、あの状態が催眠状態ですか? って聞くと、そうだ、という。あと5回来れば、悩みが治っているよ、と言う。こっちは本当に知識がないから、そうなんだ? という半信半疑だったけれども。5回通ったとき、はいあなたは治りました、とそいつに言われてね。え? って感じ。全然変わってない、と言っても、催眠に入っていたから大丈夫と言うんだ。後にわかったんだけど、私がこの道で飯を食うようになって、ほんとうにお粗末な人だったなって。

━ひどいところもあるもんですね

 あのころは、まだまだ催眠って言っても、催眠術のようにまがいもの、インチキと言った世間の風潮があったんだ。でも、とてもあんなところでも催眠療法を受けたいという人がたくさんいてね。そこで仲良くなった人に、催眠に入れたか? といったら、まだ前に通ったところの方が良かった。入れていた、と言うんだ。だからそこを紹介してもらった。その人はそこでは良くならなかったんだけど、自分ならもしかしたら、と言うものがあって、通ったんだ。まあ働いていたから、お金はまだ余裕があった。そこで、はじめて催眠状態に入ったんだけど、あ、これが催眠って言うのか、とゆうのが、きっかけだね。手が温かくなったり、重くなったり感じたり、どんどん腕が自分の意志とは関係なしに誘導で広がっていく。すごい! と思ってね、これなら、自分の自律神経を自分でコントロールできる、と喜んだね。
だから、自律訓練法をマスターしようと必死で努力した。暇があれば、やっていたね。

━自律訓練法は、薬を飲む以外の方法では、神経症治療には一般的といえますね。

 そうだね。神経症は、自律神経がいかれるというか、暴走してしまうからなるんだね。でも、訓練しないことには、絶対コントロールできない神経なんだ。だから自律神経というんだけどね、シュルツ式の自律訓練法がだいぶ上達していったな。そこの先生にもいろいろとアドバイスをもらって、結構才能があったのか、とてもうまくなった。

━自律訓練法を身につけたから、よくなられたんですね

実はね、そうだといいんだけど、ちょっと違うかな。ちょうど訓練をやっているときに、父親が死んでね、あるとき良くなってた(笑)。でも自律訓練法をやっていたからというのは間違いないね。

━ということは、父親の存在は絶対的だったんですか? 悩みがなくなっていくほどに。

封建主義的な家で育ったからね。当時にしてもなかなかあそこまで頑固で分からず屋の人間はいなかっただろうね。母は父親に虐げられてとても可哀想だった。一人息子だったから、父親の目が常に私に光っていたんだ。それが消え失せたとき、なにか緊張感から解放されたんだ。自律神経のバランスがそこでひどくする原因がなくなった。だから、その後の地ならしに、私が訓練していた自律訓練法が役に立ったんだ。

━もし父親が生きていたら、どうなっていたんでしょうか? 自律訓練法でなんとかなったと思いますか?

 それはよく考えるよ。いいときに死んでくれたかな、とも思う。まあ、わからないね。とにかく、自己催眠にすごく興味を持った。よし、それを職業にしてやろう、と一念発起して、会社を辞めた。最初はお客がなかなか来なかった。やばいかな、と思い始めていたとき、リスクを背負って、借金して駅に看板を掛けてみた。そうしたら、一気に来るようになりましよ。ああ、悩んでいる人がたくさんいるんだな、がんばろうとと思ったんだ。たくさんの人をみていくうちに、他者催眠もどんどんうまくなっていってね。

━催眠に深くはいるコツを教えてください。それと私は催眠状態に入れるタイプですか?

 あなたはあまり催眠に入れないと思う。催眠に入れるタイプ、入れないタイプって言うのは確かにあるんだ。被暗示性がとても高い人は、こっちも楽だね。勝手にかかってくれるんだ。

━悩んでいる人というのは催眠に入りにくいと聞いたのですが、その対策はどのように?

催眠はリラックスして、雑念が浮かばない状態で、なおかつ集中していなければならないんです。だから、いかにその環境を整えるかを考えました。だから防音室でセラピーを行っています。暗闇で刺激が少ない状態で、とてもリラックスできる状態にする。

━この部屋にいると異空間という感じがしますね

最初はね、隣の部屋の音が聞こえるマンションでやっていたものですから、敏感な人はなかなか入れなくてね。環境作りが大事だと悟ったんです。

━どういう方法でセラピーを行っているのでしょうか?

私はまず相手と共感を持つことをします。相手が私を信頼してくれないと催眠に入れない。だから、雑談をして、それは一見セラピーとは無関係なんだけど、実は関係あるんだ。そこで相手が私に心を開いてきたな、と思ったら、本格的にセラピーを始めます。この部屋(防音室)で、まずリラックスをさせるために、上半身をゆらゆらゆらしたり、マッサージチェアをつかったり、中には自律訓練がうまい人は、そのテープを聴かせます。相手が催眠に入ったり、近づいてきたら、暗示をかけます。「人が気にならない」「人は人、自分は自分」「ゆったりしていてとてもいい気持ちだ」といった感じにね。

━「ゆったりしてとてもいい気持ちだ」と言う先生の言葉だけでも、こちらがゆったりしてきそうですね。

声も重要なんですよ。もともと声質はけっこう若い頃からほめられていてね、だから催眠療法士という職業は自分に向いているなとなおさら思ったんですね。人に催眠にかけるとき、どういう声質がいいのか研究しました。いま言ったような声質が一番ですね。

━先生の自律訓練法のテープを聴かせてもらったんですが、リラックスできそうです。

いまはCDですが、自律訓練法を来ている人みなにやらせています。

━上達のコツとは?

集中力でしょうね。雑念だらけだとなかなかね。あとは訓練する時間が多ければ多いほどいい。だらけずに頑張ることです。あとは、私の声に意識を向けてください。しっかり聞くこと。そして暖かくなった、重くなった、ゆったりしている、という感覚をしっかりと覚えること。無理になろうとはせずにする。イメージトレーニング力も必要となりますね。

━テープの中に思い切り笑うところがありますが?

神経症で苦しんでいる人というのは笑わない生活、笑う機会がない生活です。私もそれには経験があります。体が固まってしまってね。笑うと言うことは体がゆるむということです。心理学的に、悲しいから泣くのではなくて、泣くから悲しくなるというものがあります。笑いもそうなんですよ。楽しくなくてもいいから、とにかく笑ってみよう。笑えば楽しくなるものが、人間の感情というものです。そして悲しいからといって、泣くことは極力さけよう。カタルシスを伴う涙は別ですけどね。だからCDのなかに思い切り笑うことをさせています。自律訓練法がそれまでの段階でうまくいっていれば、結構笑えるようになりますよ。不思議と。

━聞いているこちらも楽しくなってきますね。

そうでしょう。そのあとに・・・

━怒れ! というものがありますね。怒りをぶちまけろ!みたいな

不満や鬱屈した感情の発散ですね。笑っても発散は出来ますが、もっと直接的にはき出せ、と言うものです。私は父親がいるから怒ることも笑うことも出来なかった。したら、怒られたから。感情を押し殺していたら、ますます神経症の罠に陥ってしまいますよ。だから、テープで感情をぶちまけろ、と言うんです。本当に感情を押し殺していたら、人間はとことんまで病んでしまいますよ。それを避けるために、心に平和を取り戻させるために、怒らせるんです。それはこの防音室でも思い切り「馬鹿ヤロー」とかむかつくやつの名前を叫ばせています。中には大好きだと思っていた実の娘の名前を叫ぶ人がいました。本人の驚いていましたけどね。まだ小さな娘さんなんですが、実はとても母親の心理的負担になっていたんです。姑のせいで心が病んでしまったと思っていた人だったので、驚いていましたね。原因がわかってホッとしたと言っていました。感情の発散はこういう意外な効用もあるんですよ。

━怒ることで、無意識に潜んでいた本当の問題がわき出てくると言うことですね。

そう。それこそ催眠療法の得意とすることです。意識というのは天の邪鬼ですからね。無意識で煮えたぎっている感情を、理性がコントロールして、意識の上に上ってこないようにしているんです。

━人間の心って厄介というか、うまくできていますね

でも万能じゃないんだな。だからトラブルの対処の仕方が変になってしまうんだ。ほんとうに娘がにくくてたまらないのに、憎いのは姑だけだと変化させてします。

━でも、本当の理由が当人もわかっていないから、ずっと悩みを引きずってしまう・・・・

自律神経や無意識という手の届かない世界を扱うのが催眠療法です。そこに私も惹かれてこうして白髪になってもやってますが。これからも声が出なくなるまで続けていきますよ。

━どうもありがとうございました

 


催眠療法(東京)

 代々木行雄氏

 若々しいインテリ系セラピストである。大学で心理学を専攻し、卒業後はカウンセラーの仕事に就いていた。その後、カウンセラーの仕事に飽き足らなくなり、催眠療法を勉強した。いまは東京で催眠療法を開いている。心理学の知識はとても豊富で、驚くばかりである。歩く心理学事典と言ってもいいかもしれない。とはいえ、そのことを誇ることもなく、印象はとても物静かなインテリである。でも心理学への情熱はしっかりと持っていると感じる。特に自分のやっている療法だけでなく、心理療法全体の問題を改善していくべきだという熱い心に敬意を表したい。

━人の心を扱う学問ほどおもしろいものはないというのが持論だそうですが

はい。父親が心理学の教授をしていまして、子供の頃から影響を受けてました。もっともっと追求していっていい学問だと思います。

━よく心理学をマスターすれば、人間関係でも常に有利にたてると思う人がいますが、本当のところはどうですか?

まあ、大学の教授が、すごい人間関係で達人かというとちょっと違いますね(笑)。でも、知っておいて損はないです。知識だけではもちろん駄目ですが。その知識をどう人間関係でいかしていくか、ですね。

━人の心が読めるようになりましたか?

まだまだ勉強中です。たとえば、嘘をついている人は、よく顔に手をやる、と言いますが、その知識がないと、相手が顔ばっかりさわっていても、嘘をついているな、とはわかりませんよね。でも、それを知っていれば、その場面に直面したときに、あ、嘘ついているかも、と思えるわけです。その連続ですね。でも観察眼は必要だと思います。僕は、ふつうの方より人の心を読めると思います。いろんなケースを知っていますから。でも、親父は心理学の教授のくせに、よく人にだまされていたようですけどね(笑)

━ハハハハ。このインタビューは悩んでいる人やその家族が眼にすることが多いと思います。そういう人たちほど心理学に興味をもっていますね

そうでしょうね。身近に人間心理と直面する環境にあれば、自然と興味を持つと思います。私は悩みもしたり傷つきもしてきましたが、やっぱり父親の環境が大きかったですから。何にも悩まずに生きている人は、なかなか心理学に興味は持てませんよ。相手の心を察することが出来ないとだめですよ。

━なぜ催眠に興味を持ったんでしょうか? 大学教授の道もあったと思いますが

父親と同じ道は嫌だったですね。だから心理カウンセラーになろう、これからどんどんのびていく分野だぞ、ということもあって選びました。でも、クライアントとの話だけというのは、物足りなかったんですよ。もっと直接に人の心に働きかけたかったんです。カウンセラーもうまい人になると、十分効果的ですけれど。

━催眠術というと怪しげなイメージがあります。たとえば人を殺せ、と命令できるのですか? また女の人を裸にするとか。

誤解は多いですね。なんで催眠術をやるの? と当時いろいろ言われましたよ。そのとき、僕もけっこう風当たりが強いかも、と感じたんですが、内面内面へと追求してみたかったので。あと誤解を解きたいんですが、催眠は洗脳ではないです。相手が嫌な暗示をかけても相手が拒否します。また催眠術ショーと催眠療法は別に考えて欲しいです。たしかに催眠は、人の記憶を消したり、子供の頃に戻らせたり、たとえばゴキブリや芋虫にだって当人をその気にさせます。だから、ショーにもなるし、また映画で安易に殺人に使われたりしています。そういうのを見て腹が立つんですね。だから、催眠療法士の人はもっともっとアピールしていって、正しい知識を広げていかなければならないと思います。無限と言っていい可能性がありますから、誤解や偏見が障害となるのはもったいないことと思ってます。
オウム真理教の事件で、たぶん洗脳は怖い、催眠も怖いというイメージが確立されたんだと思いますが、カルト教団の中にいると、善悪の区別がつかなくなる。そればかりかサリンをまけば天国に行けるみたいな価値観を持つとやってしまいますよ。それは人の心がそういうものなのであって、催眠の問題ではないですね。だから、催眠はマインドコントロールという偏見は間違ってますね。あくまでれっきとした治療ですし、まか不思議な力で催眠をかけるわけではないです。

━催眠状態とは眠っている状態ではないですね

そうです。ちゃんと声は聞こえてますし。睡眠と催眠も違います。

━自分が催眠にかかっているとかけられている人もわかるわけですね?

そうです。ちょっといつもとは違うなと思いますよ。端から知識のない人が見ると、当人はまったく意識のないと思ってしまいますが。

━催眠に入りやすいタイプを教えてください

子供ほどかかりやすいですよ。大人でも子供の心を持っている人ほどかかりやすいです。

━相性はありますか?

ありますね。でも相性が合うようにこちらが持って行くことが、催眠療法士にとって重要です。ラポール(信頼関係)は作り出すものですから。

━というと、最初の話し合い、カウンセリングが重要ですね。

そうですね。カウンセリングはすべてのベースです。それで始まりそれで終わるのが嫌で、僕は催眠療法に移ったんですが、始まりはそれです。クライアントが心をさらけ出してくれないと意味はないですけどね。相手が勝手に心の内をはき出してくれればいいんですが、やっぱり悩んでいる人だし、知られたくないこともありますし。

━この先生なら話してもいいや、と言う雰囲気が重要ですね

まさにそうです。親子でも恋人同士でも心の内は隠したままですけど、心を扱う職業の人には、いえるようにしなくてはいけないと思っています。人によっては時間をかけなくてはいけない人もいますし、その人にあった対応が必要ですね。だから、誰一人として同じ人はいないように、同じ接し方はできないですね。敏感で怯えきっている人もいれば、とてもハイテンションで、でもある場面になると、すっかりパニックに陥ってしまう人もいる。だから、毎回毎回、クライアントに会うたびに勉強になります。

━セラピーのやり方を教えてください

まずはカウンセリングをします。カウンセラーを仕事としていただけあって、時間をしっかりととってやりますね。だから他のセラピーの人よりもカウンセリングの時間は二倍は長いと思います。相手の状況を把握して、分析します。アドバイスできることがあればアドバイスをしたり。そこから、他者催眠や自律訓練法へと移っていきます。よくカウンセリングをしているので、相手も僕のことをわかっていますし、こちらもよく知っている。だから、この人にはこういうCDを聞かせて、リラックスさせようとか、こういう暗示が一番いいとか役に立ちますね。心の問題をむき出しにして、退行させたり、ストレス発散をやって、心のトラブルを減らしていきます。終わってからもまたカウンセリングをします。そのときは、リラックスしたまた薄暗い部屋なので、最初のカウンセリングとは違って、より深く話すことが出来ます。最初のカウンセリングで頭がまとまっているので、より深くカウンセリングできますね。そんなやり方です。

━なるほど。カウンセリングだけと催眠療法を行うことの違いはなんでしょうか?

症状が重い人ほど、催眠療法が効果的です。カウンセリングのみだと、ちょっと届かないかな、と言う思いをたくさんしてきましたので。でも、必要なことですけどね。

━心理療法の未来を憂えている代々木先生ですが、これからの心理療法の展望について聞いてみたいです

間違った知識をなくしていくことが、みなに課せられた使命だと思っています。心の悩みは薬なんかでは解決できないですし、対症療法ではない、根治療法がこれから先、どんどん必要になってくると思います。その障害をなくしていくこと。それが神経症で苦しむ人にとって、一番いいことだと思っています。

━ありがとうございました


 

匿名

前世療法士 菅本(仮名)

埼玉で前世療法を行っている菅本氏。何をやっても治らない人が救いを求めてやってくる。神経症で苦しみ続けると、人はどんなものにでもすがろうとする。だから客が思った以上に来ているそうだ。科学的・心理学的なものとは違うこの療法について伺ってみた。注目すべきは、もがいている人間はどんなものにでも手を出すと言うことだろう。一種の悩み続けることへのパニックかもしれない。私はこういう世界は信じていないが、否定する気もない。はたして自分で納得できるのだろうか? そう思って取材を申し込んだ。

━前世療法というと、前世はマリー・アントワネットだとか、狐だとかそういうものですか

悩みの中には理論的に説明できないものがあるんです。いきなりパニックに陥ったとか、なぜか知らないけれどずっと手を洗っているとか、人から虐げ続ける、というのは必ずその人の前の人生に理由があるんです。今の現世で苦しんでいるのは前世の行いが悪かったから、としか説明がつかないものがたくさんある。

━悩んでしまうのは、前世にひどいことをしたから、または罪深きことをしたからですか?

ほとんどそうです。いまの現世の人生で埋め合わせしているんです。

━ということは、もう苦しみ続けるのはしょうがないと言うことですか? 治療にはならないと思うんですが

違います。まず自分の人生がなんなのか知ること。手を洗い続けたり、顔を洗い続けたりする人は、前世で人を傷つけた、殺めたと言うことが多いんです。血をあらう仕草ですね。

━どうやって菅本さんは知るのですか?

その人の前世をのぞき込みます。

━催眠状態でですか?

私は、前世千里眼と言っているんですが、私が誘導して患者を導きます。そのとき見えるんです。

━一種の超能力ですか?

超能力ともいえるかと思いますが、自分ではそう考えてはいません。見えるのです。読み取れると言いますか。

━それで今苦しんでいる原因がわかるというわけですね

そうです

━ではどうやって悩みを持っている人の悩みを解消させていくんでしょうか?

他の前世療法の人はどうやっているのか知りませんが、前世の一種の罪がたまっているから苦しんでいる。そこから取り除いていく。また理由がわかると人間というものはホッとするものなんです。みんな心の悩みを抱えている人はなんで自分がこんな目にあっているのかわからない。そこをわからせてあげるんですよ。その原因はほとんどが前世とのつながりからあるから有効なんです。

━前世の人物、もしくは動物などと交信は可能でしょうか?

可能です

━言葉を投げかけずに、念みたいなものだけで訴えるのでしょうか

言葉で言います。でも相手に伝わるときは念です。言葉で訴えかけるのは、患者さんに聞かせるためでもあります。そちらのほうが大きい比重を占めています。そうすることで患者さんも理由がわかり、悩みがどんどん収縮していくんです。前世の対象と交信することで、相手の罪深き行為を責めます。それが現世にもいい影響が出るんです。

━なるほど。前世の罪深き行為が軽くなれば、現世も軽くなるんですね?

はい。「もうあなたは楽になったよ。前世から解放したから」と言葉を投げかけてやるんです。

━そういう世界を信じない人も多いと思いますが、そんな人が菅本さんの前世療法にかかっても意味があるのでしょうか?

信じなくても、前世からの理由があるから悩んでいるから悩んでいる。ちゃんとそれが存在しているんです。でも受け入れなければ、意味がありませんね。とても損をしていると思います。

━ありがとうございました

 


精神科医 T・K氏

T・K氏は薬物療法の他に森田療法を実践している。対症療法と「あるがまま」の理論の徹底により、心の悩みを抱える人たちに相互補完の作用で立ち向かっている。

━先生は薬物療法の他に、森田療法を取り入れられていますね。

薬物療法だけですと、患者さんに申し訳がないな、と言うことがありまして。体の病気でも西洋医学と東洋医学がありまして、西洋医学は対症療法、東洋医学は体の健康度を高める、という相互補完に関係になってます。だから、精神科としても、その二つを取り入れなければ、と思って始めまして。また森田博士の理論にとても感銘を受けていましたから。

━お互いの欠点を補完しあい、長所だけをとりいれることができますね

そうですね。「今そこにある危機」を薬で、つまり力で抑え込んで凌いでいるうちに、森田療法によって、悩まない体質と言いますか、心にしていきます。

━森田療法は、日本で生まれた療法と言うことで、東洋医学みたいなものですね

「あるがまま」ができないから、悩んでしまう。あるがままが出来れば悩まない。その指導をして言ってます。書籍でも大学の頃から、そういう関係の本を愛読してまして、「あるがまま」は悩みだけでなく、生きること、人生すべてにいえるなと思っていました。あるがままはまさしく東洋の思想ですよ。宮本武蔵でも、剣客がいきつくところまでいったら、「あるがまま」になっていますから。

━「あるがまま」は人生の達人以外でも可能なことでしょうか

可能です。結局悩みが良くなると言うことは「あるがまま」が出来なければ駄目ですし。出来る人はできます。肩の力を向くこと、結果を求めない、考えないで行動をとにかくしていく、それをさせるために、長期入院から教育入院からいろいろと指導しています。悩むことは考えることですからね。考えて「あるがまま」にはなれません。

━ハンデがない人でもなかなか大変なのに、神経症に陥ってしまった人ほど、「あるがまま」は難しいと思います

そのためにも、薬物療法と併用しているんです。雷に打たれたように即「あるがまま」が出来るわけではないですから。とにかく動く、作業をする、ということで体から覚えさせないとなかなか難しいですね。

━先生の病院はとても来院患者が多いですね。心を扱うだけに、しっかりと患者と向き合うことは必要だと思いますが、そこのところはどうなっていますか?

入院患者ならともかく、通院だけですと、なかなか時間をとることが難しいですね。そのためにもカウンセラーがいますが、医者となると数をこなさなくてはいけないですから、そこが精神科や心療内科にとって大きな問題だと認識しています。

━事務的にしか処理できなくなる

そうですね。同僚の医者も最初はこまめに対応していましたが、そんなことでは数をさばけないことと、へとへとに疲れてしまう。患者さんにとっては不満でしょうが、事務的に薬だけを渡すしかなくなる。本当はそうしたくないのに、と言ってましたよ。そこが嫌で、私は森田療法を取り入れたんですが、薬物療法だけを希望する患者さんにはどうしても、というものがありますね。時々事務的に対応している自分がいたり、薬を強くするだけの対応をしている自分に気づくと愕然としますね。これではいけない、となる。

━神経症の人は、薬をもらうためだけに病院に通っている人がほとんどですね。心のふれあいみたいなことは求めていないようです。

どうしてもしょうがなくなってそうなるみたいですね。残念であると同時に、自分にあう薬がみつかれば、それでも変わらない部分もあります。薬を模索しているときには、医者もアドバイスをたくさんするべきだと思います。中には心のふれあいを最大限やろうとするお医者さんもいますが、そうなると患者さんが多く来る。だから、時間がとれなくなる。悪循環ですよ。どうしようもないですね。

━なるほど。名医の条件とは何でしょうか?

患者さんから信頼をもたれる、支持されると言うことだと思います。つまり、自分の言うことを患者さんが飲み込んでくれて、動いてくれると言うことですね。信頼関係がないとなかなかできないことですから。信頼関係のできている医者が患者さんに「それは気のしすぎだよ」というとします。「気のしすぎ」は言ってはいけない言葉でもあるんですが、強く支持されている医者から言われたら、患者さんも「たしかに気のしすぎだ」と受け入れてくれます。だから言ってはいけない言葉ではなくなるんですね。でも、信頼のない関係、またはまだ日が浅い時に「気のせいだよ」「気のしすぎ」と医者が言ったら、この医者はダメだ、他へ行こうとなります。同じ言葉でも、こうも違ってくるんですね

━では、現在のほとんどの先生が名医の資格がないということになりますね。

薬物療法だけですとちょっとね。難しいところがあると思いますよ。コンビニのようにそれ(心のふれあい)が必要なくてもやっていけるというシステムがありますから。我々も頑張らなくちゃいけないところだと思うんですが、でもなかなか難しいですよ。

━僕は何人もの薬漬けになった患者さんと話をしているんですが、その責任はどこにあると思いますか?

そうですね……医者ですね。でも、依存してしまうのは当人の問題でもありますが、やっぱり専門の知識を持つ我々かもしれません。でも病院の方でも言い分があるんですよ。患者さんが苦しい、どうにかしてくれ、と言う。その様子がいたたまれないから、強い薬を出してしまう。量を増やしたりしてですね。それでおさまったりするから、いまの量や薬の種類がぴったりと合っているんだと判断してしまう。でも、また何とかして欲しいとなる。患者さんは今の苦しさをどうにかしたいので、こちらとしても薬を出してしまう。

━患者さんが薬をもっと強くして欲しいと頼むんですか?

そういう人もいます。薬に信頼を置いている人は。でも、医者の判断の方が多いと思います。やっぱり対症療法をしなくてはいけないからしょうがないですよ。患者さんが病院に来るのは、今苦しいから来るんです。それに応えなければならないんですね。

━鬱病の人に抗うつ剤を飲ますと、自殺をする動機が強化されて、実行に移してしまうという副作用があります

一番怖いのはそこですね、医者としても。家族に申し訳がないし、でも薬を出さないと苦しむ。慎重にやらなければならないと思います。まずは本人にとっても家族も、そういうケースが起こりうると言うことを知っていてもらいたいですね。厚生労働省もその注意書きを明記するよう指示してます。

━事務的に抗うつ剤を与えていたら、鬱の方の自殺防止まで手が回らないんじゃないでしょうか

そうですね。そこはしっかりケアをしないと。またご家族の方の強力もなおさら必要となってくると思います。二十四時間こちらが管理するわけにはいかないですから。

━最後に現在の日本の「心のケア」について

もっと気軽に私たち専門家に心の悩みを相談してもらえれば、と思います。医者の私が言うのも何ですが、重い薬を飲んでいるようですと人生がもったいないことになりますから。まわりからみてささいなことでも、本人が深く傷ついていることもある。そのときは、周りを見ないで、相談しに来て欲しい。心の悩みは、当人以外の人にとっては、「ちっぽけなこと」にけっこううつるものですから。友達に相談してもそれをしっかりと受け止めてくれる人はいないです。相談した方もくよくよ悩んでいるのは自分が悪いとなってしまう。そうして手遅れな状態になっていくんですが。そのときに心の専門家に相談する雰囲気作りを盛り上げていかなければならないと思いますね。いつでもどこでもすぐ相談できるというものをね。

━ありがとうございました


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現在神経症で苦しんでいる人へのインタビューです。そのご家族にもインタビューしています。(取材形態は直接、電話、メール)
すべて仮名です。

たかやまみのる(症状:対人恐怖症・鬱病・ひきこもり) たかやまさちこ(みのるさんの母親)

対人恐怖症と鬱病で出口の見えない生活を続けている母子のインタビューです。当初は母親だけの取材でしたが、母親のご好意により息子さんも参加していただきました。

 

━どれくらい息子さんは悩まれているんですか?

さちこ:もう12年になります。今は30歳ですから、17,8の頃に神経症になりました。

みのる:中学の頃から対人恐怖症になったんですが、ひきこもりはじめたのが18歳前後でした。

━みのるさんの夢は何でしたか? 悩む前は

みのる:電車の運転士になりたかったです。もうだめですけど。

━悩みに陥ってすべてが一変しましたか?

みのる:生きていていいことなんか何もなかったです。ずぶずぶ堕ちていった感じです。

さちこ:小学生の頃からいじめにあいまして。死にたい死にたいといつも漏らしていました。

━いじめた人間に対して怒りを感じますか?

みのる:感じます。殺してやりたいと思ってます。できればのろい殺したいって・・・・

さちこ:学校に掛け合ったんですが、何にもしてくれなくて、私は学校の先生が憎いです。息子をこうまでしたのはあの人たちの無理解です。

━現在どこからに通われているんですか?

さちこ:病院に行って薬をもらってます。でも落ち込み続けていて効果が全然ないんです。はやく薬を飲まないような生活に戻ればいいんでしょうけど、なかなか・・・・。もう私も本当に苦しいんです! いつまで続いてしまうのか(泣く)。この子がほんとうに不憫で不憫でならないんです。こんないい子がどうして苦しまなければならないんでしょうか。憎いです。憎くて憎くてたまりません

━いじめた子供や知らん顔をする先生は悩んで生きているわけじゃないでしょうし

さちこ:何でなんにもしていない子供がずっと悩まなくてはいけなくて、のうのうと生きている人間がいるんでしょう

━いままでされたセラピーはなんですか?

さちこ:精神科に通院しまして、そのあと催眠療法や前世療法をやらせました。無為療法というのもやらせました。でも、回復しなくて、いまはまた薬を飲ませています。

━それまでに使われたお金はどれくらいですか?

さちこ:800万円は使ってきたと思います。

━すべてが無駄だった?

さちこ:はい。父親ももう病院しか行っては駄目だとなりました。薬を飲んで入れはいずれ治る、と申してまして。わたいは息子を何とかしたいものですから、喧嘩も絶えなくて。

━理解のある父親ですか?

さちこ:みのるちゃん、どう思う?

みのる:たるんでると言われます。俺がおまえなら悩みを乗り越えているって。分かり合えないですね。

さちこ:この子は父親が嫌いで、もう二年は話していないんです。父親が帰ってくる時刻になると部屋にひきこもってしまって。

━父親とはしょっちゅう衝突しましたか?

さちこ:夫は会社をゼロから立ち上げたたたき上げの人間ですから、心に悩みを持ってくよくよしていることが信じられないんです。それでも治療のためのお金を出してくれました。何にも効果がないとなると、急にお金を与えないようになりまして・・・・息子はどうしても良くなりたいから、必死で食い下がったんですけど。

みのる:よくすることにもう疲れた・・・・

━治療不信になってしまったんですか

みのる:(うなづく)

さちこ:とても評判のセラピーに通おうとしているんですが、通おうとしないんです。何をやっても同じだし、今度も裏切られたらおしまいだって。多くの人がよくなられているもので、私も期待をかけているんですが、本人に気力がなければもうなんにもならないんです。もっと早い段階に知っておけば良かったですけど、時間がたってしまうともう・・・・私も一番この子の自殺が怖いものですから、どうにかしたいんですが。この子がずっと働かなくてもいいように、しっかりと財産だけは残してやりたいと思っているんです。幸い父親が経営者ですから、なんとかなるかもしれませんが。もしかしたら父親の会社を継げば責任感も出て立ち直れるかもと思うんですけど、父親は絶対無理だって言うんです。そこでも喧嘩がありまして・・・・

みのる:無理無理。いいよ、もう

さちこ:今は私たちがいますからいいですけど、父親は70近くですし、私も60歳ですので、今後が心配で心配で(泣く)。

━毎日どのような生活リズムですか?

みのる:だるいから、部屋に・・・・。すいません(席を立つ)

さちこ:すぐ疲れてしまって、いつも寝ているんです。薬の作用もあるんでしょうけど。

━薬が効かないのがわかっているのに飲んでいるのは何でですか?

さちこ:もしかしたら中毒になっているのかもしれませんね。飲まないと不安が襲ってくるんです。鬱病の不安とかそういうんじゃなくって、薬を飲まないこと自体がとても不安なんですって。だからもう手放せないんです。でも、でも全然効かないんですから。寝ることだけが不安から逃れる唯一の方法で・・・。午後4時近くに起きて、それでもベッドの中にほとんどいるんです。

━精神科のお医者さんとはどういう話をしているんですか?

さちこ:薬をもらうだけです。だからつっこんで話をしていないですね。医者も困った顔を浮かべていて。ほんっとにもう・・・。たぶん見捨てられていると思います。こちらも薬をもらいに行っているだけですから。

━みのるさんは外には出ないんですか?

さちこ:人が怖くて怖くて。どの人間も自分を馬鹿にしたり、笑いものにしているって言うんです。人はそんなに暇じゃないのよ、と言ってもそう思いこんでしまって・・・。最初は対人恐怖症なので、一人でいればゲームをやったり、テレビを見たりで。ゲームをやっているときの顔はとても幸せそうだったんですけど、今はもう何をやっても楽しくないと言って・・・・

━鬱病が進行してしまったと言うことですね

さちこ:ずっと引きこもり生活をしていまして。外に出ると吐き気がしたりするんです。もう体自体も受け付けなくなって。反射的に吐き気を催してしまうんです。だから、ずっと家にいてもいいように、なんとか生活とお金の面倒をみなくてはいけないのが私たちの義務です。すっかり自信喪失してしまって。すべてに疲れ果ててしまって。なんであの子だけこうなってしまうんだろうって、いつも悔やんでいます。あんないい子がなんで苦しまなければならないのって

━僕もいろいろと神経症の取材をしてきましたが、みのるさんみたいな人はとても多いですよ。インターネット上ではホームページを持っている人がとても多いです。

さちこ:うちの子はホームページを作ろうという気力もないですから。まだその人たちは軽いと思いますよ。たくさんいるのは私も知っていますけど、何にもならないですから。ずっとこんな状態が続くと思うとほんとにもう・・・・・未来も何もあったものじゃないです。半分あきらめかけてます。心中しなくてはなんて考えますし。

 

 

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神経症を見事よくすることができた人へのインタビューです。

にしこりさん(対人恐怖症を克服された「にしこり」さん)

━対人恐怖症になったのはなぜですか?

父親が教育者で(笑) しかもとても視野が狭い親でしたから息子が病んでしまうのも今考えるとなるべくしてなってしまったな、という感じです。

━なるほど。学校の先生の子供はとても悩みやすいそうですね。

それだけではないんですが、僕も悩んでいたときにやっぱり教育者の子供が神経症で苦しんでいると言うことを知りまして。ああ、やっぱり僕の育ってきた環境が大きかったんだな、と思ったんです。それを知ったのは岩波先生というすばらしい先生なんですが、その先生のやられているプログラムをやって知りました。自分なりにも分析していって、父親の育て方というものが、余裕をなくしてしまったんじゃないかと。とても厳しい父親で、かくあるべき! という人でした。もろに影響をつけてしまいまして、いつも両親の評価を得ようともがいていました。教育者の息子は父親にとってきちんと立派に成長しなくてはいけないものですから。

━その熱意が子供に対しては逆効果になってしまうということですね。学校の生徒にも示しがつくように。

まじめ一辺倒の父親だったものですから、遊ばせてもらえなかった。学校でどうやって生徒を教えていたのかわかりませんが、たぶん人気なかったと思います。

━母親のほうはどうでしたか?

子離れが出来ない人でしたね。とっても過保護に育てられました。父親と母親はあまり仲が良くなかったんですけど、その分母親は僕に依存しましたね。すごく中途半端に甘い人間とこうでなければならないという人間に育てられて、たぶん父親の悪影響の方が強かったと思いますけど、感じやすくて、よく思われようとする子供でしたから。完全主義者なのに、なかなかうまくいかなくて。友達ともトラブッたりして、でも、こんどはうまくやらないといけないと、余計気張ってしまいました。

━それで人の評価をおそれるようになってしまった

はい。いつも悪口言われたらどうしよう、父親にばれたらひどいことになるぞ、といつも心がおさまるときはなかったですね。いつも緊張状態になったと思います。でもそのときはあまり気づいていなかったようです。

━緊張していることに気づいていない?

そうですね。緊張が日常でしたから。もう悩みにはまっていたと言われればそうでしたけど、でも友達と楽しい時を過ごせたりもしていましたから。家では母親にべったりで。でも父親の厳しさからは逃れられないという・・・悪循環でした。

━いつごろから神経症になったのですか?

高校一年生の時ですね。自己視線恐怖症という症状になりました。自分の視線が強烈に人に悪影響を与えているというものです。だから、人に迷惑かけちゃいけないという思いが、よけい迷惑をかけてしまう。

━それは気のせいだけじゃなかったんですか?

実際人に迷惑をかけていたと思います。でも8割ぐらいは自分の思い過ごしかもしれませんけど。

━人は見られることを嫌がりますからね

実際、自分の視線は相手に言っているわけではないんです。見えている訳じゃないんだけど、でもそう相手からは見られていると感じ取られてしまう。だから、こっちは必死で見ないように、眼が動かないように頑張ってました。だからよけい体や眼に力が入ってしまい、もう最悪でしたね。ほんときつかったです。

━いつ治療に通われたんですか?

僕の視線がなんか壊れたと思ったんですが、最初は視線恐怖症とか対人恐怖症というものがあるとは思わなかったです。でもある時に、インターネットで同じ症状の人がいたんです。なんて検索したのか忘れてしまったんですが、あ、俺だ! と思いました。でも怖いことが書いてあるんですよ。視線恐怖症は眼を潰しても治らないって。

━目を閉じれば、とりあえずは安心できると言いますが

そうですけど、動いているときは眼をあいていなくちゃ危ないから。それが通用するのは電車で寝たふりをするとかそんなことぐらいです。だからいつも授業中に寝ていて、たぶんぐうたらだと思われていたと思います。

━あれだけ努力していたのにですね

そうなんですよ。たぶんもともと人より努力するタイプだと思うんです。それは父親のしつけがあるわけですけど。でもはまっちゃうと、結局視線が気になる努力だけ、それを打ち消そうとする努力しかしていないんです。いつも学校から帰るとへとへとでした。みんなもそうらしいですけど。

━対人恐怖症にはまって、父親はなんて言っていましたか?

父親は対人恐怖症の存在そのものを知らないと思います。こっちもいってもしょうがないと思っていたし、絶対たるんでるからと言われると思いましたから、一人で悩んでました。恥ずかしくていえないですし。とにかく自分が対人恐怖症だから、精神科に行こうと思ったんです。保険証を持ち出して。

━どうでしたか?

安定剤みたいなものをもらいました。良くなると思ったのに眠くなっただけで、怖かったです。でも、眠くならないものに変えてもらって、とりあえずは飲み続けていました。何にもならなかったですけどね。母親も弟も明らかに元気がなくなっている自分を気にかけてくれてはいたんですが、早く高校卒業までには良くならなくちゃと思いました。学校で顔を上げて授業が聞けない状態ですから成績は落ちました。だから悔しかったですね。これさえなければといつも考えていましたね。

━みんなこれさえなければと思うそうですね。

ほんとそうです。これさえなければの「これ」ほどなくすることが難しいですけど「これさえなければ」ですね。その考えがよけいに神経症を強化してしまうと思います。

━そのあとは?

浪人をしまして、何とか大学に受かりまして。試験場ではやっぱり苦しかったです。カンニングを疑われたらと思っていましたから。それは高校の試験の時もそうだったんですが、カンニングでつかまったら、自殺しようと思っていましたね。こっちはしたくもないのに、間違われて。家族が知ったら驚愕するでしょうし。教師の息子がカンニングで捕まるというのはありえないですよね

━そうでしょうね

だからよけい怯えました。試験内容よりも神経症のことばかり頭がいってしまって。たまたま一番自分としては楽なポジションの席になったもので、通った大学はそのときの大学です。

━どういう席ですか?

右端の一番後ろです。だから他の試験よりはいつも自分の力を出せたと思います。でも、試験監督の真ん前とかになったときもあって、試験どころではなかったですね。おちました。

━そういう神経症の悪影響があったんですね

人がいるところはすべて影響が出ます。一人の時はそのときはホッと出来たんですが、のちのちそれもきつくなりました。人がいないと平静でいられたんですけど、世の中は一人じゃ何にも出来ないですから。先を見通すと、お先真っ暗でしたね。会社に行っている自分を想像すれば、暗くなるし、子供が出来ている自分を想像すればどうやって子供と接していいんだろうか、と思っていました。これから大学も四年も通わなくてはいけなくなると、まだ高校よりはましだと思いましたけど、休めるから。でも人がいるのが授業ですから、どうやって避けようかそればかり考えていました。

━神経症が一日の中心になるという

中心ではなくて、僕の人生のすべてでした。それ以外はありえない。いっつもそうです。だから、予期不安にいつもさいなまれるようになりました。一人でいても

━そのとき何か通われていたんですか?

もう大学四年のうちに治してやると頑張ろうとしました。医者を変えたり、森田療法を試したり、催眠にも行きました。でも駄目でしたね。まったく効果がなかったです。時間は過ぎていくし、焦ってきました。就職も考えると恐怖でしたね。

━お金をどこから出していたんですか?

当然僕は対人恐怖症で、人のいるところは駄目でしたから、人と接しないバイトをしたり、でも足りないから、親からの仕送りを増やしてもらったり、節約に節約を重ねて、やっとのことで通えていました。苦労したのにどれも駄目だったときは、終わりだと思いました。症状が悪化してくるし。前はこの場面は大丈夫だったのに、どんどん駄目になっていくんです。最悪でこれ以上は悪化しないだろうと思っても、悪化していきましたね。友達づきあいも苦痛だから、一人も友達がいなかったですし。半分引きこもり状態でした。昼夜逆転の生活をしてました

━でも、今は悩んでいたときの面影が見られませんね

たぶんそうだと思います。ある種の覚悟がつきましたし、悩みにとらわれていませんから。でも昔はきつかったですよ。

━ある種の覚悟って何ですか?

リスクがあっても行動するということですね。なんと言ったらいいのかちょっとむずかしいんですけれど。とにかく悩んでいるときの気持ちとは正反対の気持ちですね。自分にきついことや恐怖なこと、リスクがあることでも、それでも突き進んでいく気持ちですね。はまっているとまったくそれがないですから。それがあると言うことは、逆に症状も良くなっていくと言うことでしたね。

━ふつうの人でもリスクがあっても行動は出来ないものですが

できれば、よくなることもはやいですね、それだけ。でも、最初はトラウマとか子供の頃からの悩むルーツの解消をやっていきましたね。

━前に話された先生のところですね。

そうです。大学四年生の時にもう就職活動もやっていなかったんです。そんな気力がなかったですから。でも父親には言わなかったです。インターネットで先生と知りまして、そして通うことになりました。自分にとってとても高かったですが、必死でかき集めて。お金を気にしている状態ではなかったですから。ここで駄目なら、終わりだと思っていました。でも最高にすばらしい先生で、苦労の何倍も報われましたね。今までなんだったのか、と言うくらいにすごい先生でした。出会っていなかったら、いまこうして話していることはなかったですし、助かりました。もう、あのままだったら怖いです。出会いって大切だなと思います

━ほんとうに感動していますね。でも良かったですね。いまよくなられて、神経症は良くなるものなんだ、と実感できます

良くなるものですけど、とっても難しいとも思います。僕も苦労してきましたから。適切な治療と適切な先生と自分の努力も必要でしたね。巡り会っていない人は可哀想だと思います。それも人生でしょうけど。いつすばらしい出会いがあるかわからないですから。今重うと、良くならないのにも理由がありますね。なんでも理由があると思います。神経症になるのも、良くなるのも、良くならないのも。

━神経症をよくするために最低限持っておきたい心構えは何でしょうか?

そうですね、自分を知ることだと思います。自分はこういう流れで今こうして苦しんでいるんだ、と一本の線で通ったとき、自分の中で何かが違ってきましたから。いい方向にですね。自分を知らないで、もがいていたら何にもならないと思います。薬を飲んでも良くならないのと同じに。あと今の状況がいかにやばい状況なのか認識することですね。神経症よくする気力がないと、何にもならないですから。はっきり「知る」それが一番だと思います。知ることも、場合によってはきつい思い出があったり、恐怖な部分もありますが、知らなくちゃ何にも始まらないです。

━力強い言葉ありがとうございました。リスクを乗り越えたというオーラが漂ってきます(笑)。最後に悩まれている人に何かあれば

えーと、神経症は必ずよくなるとは言いません。僕もある先生に出会っていなかったら、いまごろもずっと苦しんでいたでしょうから。ただあきらめては駄目だと言うことと、最高の方法をやれば、神経症でも好転します、ということですね。悩んでいることもエネルギーを使うし、よくするためにもすごいエネルギーを必要とします。そのエネルギーは自分を知ることから始まると思います。あとリスクがあっても乗り越えようという気力胆力ですね。

━貴重な体験からのご意見ありがとうございました。


 

高梨満男(仮名)

高梨さんは躁鬱病で、鬱状態の時に会社を休職せざるを得なくなった。ご家族の尽力もあり、いまは会社に復帰できている。なぜ出来たかというと、薬との上手なつきあい方だそうだ。働き盛りの年齢での突然の発症は家族全体の問題にもなった。幸い会社で辛抱してくれたため、いまは躁鬱病から復帰することが出来た。環境と受け入れ態勢の良さがなければ、順調にいかなかったことだろう。

━鬱病になったとき、どう思って生きていましたか?

死にたい、死にたいばかりでしたよ。死と言う存在が自分の眼の前にあるんです。すぐ手を伸ばせば、すぐ引き込まれそうな感じでしたね。あくまでイメージで語ってるんですが。

━躁鬱ということで躁状態の時はどうでしたか?

躁状態は、実は自分では気づいていなかったんですよ。絶好調だという感じで、ほんとうに気力にあふれていまして。でも周囲とのギャップが激しくて、おまえといると疲れるとよく言われました。ほとんど寝ないでも頑張れるんですから。同僚は私が鬱になって驚いていましたね。「前は疲れるとかいってたけど謝るよ。前に戻ってくれ」と懇願されました。こっちはそんな余裕がないですから、耳に入らない状態でした。そのうち働くことも出来なくなって、上司に言ったら、それは鬱病だよと言いまして。上司も鬱病気味で薬を実は飲んでいたらしいんです。

━話が早かったということですね

そうですね。もし理解のない鬱病とは無縁の人でしたら、偏見を持たれて接せられたでしょうね。こういう風に休職できるから、と上司が教えてくれまして。

━その上司の方は休職はしたんですか?

休職はしていなかったですね。だから、俺もそのうち休むかもしれないからよろしくな、と言ってました。

━うまく薬を飲んで仕事が出来ていたと言うことですか?

そのようですね。私は上司とは違う病院に通っていたんですが、私がどんどん落ち込んでいくのを見かねて、自分の医者を教えてくれたんです。そのお医者さんとの相性がぴったりでした。お名前を言うと高田先生という方です。若い頃に鬱病を経験された方で、とても詳しいんですよ。でも当時は落ち込みに落ち込んでいて余裕はなかったですけれど。私の体質にぴったり合う薬をいろいろと試してくださいまして、復帰できるようになったんです。

━休職中、ご家族の様子はどうでしたか?

妻はどうしていいかオロオロしてしまって、悪いなと思いながらも私で元気づけることは出来ないし、子供も心配していて、どんより暗闇に吸い込まれた感じでした。必死で妻や子供が元気づけようとするんですが、どうにも気持ちが追いつかなくて、何をしても駄目でしたね。でも愛情は感じました。そのとき家族の大事さがわかりました。でも、家族のために頑張ろうとしても、頑張れない私がいるんですよ。そのときは合わない薬を飲んでいたので、廃人に近づいていったそうです、妻に言わせれば。いつ休職中に解雇されるかは覚悟していましたけど、妻が会社に行って、社長に直に掛け合ったんですよ。もうちょっと待ってくれって。それで、高田先生が処方してくれた抗うつ剤でぴったりあう薬があって、量もぴったりで、心が晴れたようになりまして。少なくとも落ち込む感情は起きませんでした。薬を飲めば仕事がちゃんと出来る、と勇気が出まして、思い切って会社に復帰したんです。

━仕事の効率は前と比べてどうでしたか?

躁状態には及ばないですが、鬱状態よりいいですよ。先生も薬がここまでぴったりの人はいないな、と仰ってくれて、これで家族に恩返しが出来ると思いましたね。嬉しかったですよ。

━今も薬を飲まれているんですね

はい

━もし薬を飲まないとするとどう思いますか?

落ち込むでしょうね。でも、原因がわからないでなっているので、しょうがないとも思います。薬を飲めば普通に近い状態になれますし、いい薬を開発してくれた研究家の方に感謝してます。上司も喜んでくれまして。この方がいなければ、いい薬に出会えなかったと思います。

━その上司は鬱状態のままですか?

安定していますね。低くですが。

━会社にいる人で鬱病の人は多いようですか?

そうですね。サラリーマンが陥る罠だと思います。隠れ鬱の人は多いと思いますよ。すごくみんなが病んできている時代だと思います。

━最後に一言あれば

薬とはうまくおりいっていけば、社会復帰できます。本当に体質にあった量と薬に出会えるといいですね。あとよく相談できる先生を見つけることですね。私はたまたま周囲の環境や人に恵まれました。そういう人との出会いも大事だと思います。

 

 


須藤さん(仮名)

須藤さんのかつての神経症はパニック障害(不安神経症)で、乗り物に乗ると過呼吸を起こしパニック状態になってしまうというものだった。有無を言わさずパニックが出てしまうため、一人で外出はとても出来ない状態だったらしい。そんな須藤さんももうパニック症状を起こさなくなった。その理由やパニック障害について聞いてみた。

━日常生活が非常に限定されてしまうと言うことで、不安神経症に限らず神経症はおつらいことだと思います。どんな症状があったんですか? またなぜなってしまったのかお聞かせください

結構ガキ大将のような人生を歩んできまして、押しが強いテンションの高い人間だったんですよ。強気でしたから、どんなものでも怖くないぐらいの気持ちでいましたね。それがパニック障害にもつながってしまった要因なんですが、大学時代にあるサークルの部長をやっていまして、けっこう下に人がついてきたんですよ。でも自分のやり方が気に入らないのか、高校までのやり方で通してしまった自分も悪いんですが、反発をみんなから食らいまして。でもこっちもなにくそとおもって、むりやり押さえつけようとして、よけいみんなと対立してしまったんです。どんどん突き進んでいくタイプだったので、自分の思い通りに行かなくなって、なぜなんだ! と思っているうちに、あるとき急に動悸がして、とても息苦しくなったんです。急に何かがこみ上げてきて、過呼吸に陥ってしまいました。そのあとにその症状が出てきてしまうのを恐れるようになってしまって、攻めの人間が守りの人間になってしまったんです。でも、サークルでは引き下がれないものがあって、対立していくうちに、そこでも症状が出てしまったんです。でも、相手も攻撃の手をゆるめないから、どんどん追いつめられてしまって、パニックの発作が起きてしまって。そのときは救急車を呼ぶ騒ぎになりました。泡を吹きまして・・・・。対立していた奴らも驚いたらしくて、俺が回復したときは、もう近寄らないようにしてました。サークルの部屋は狭い部屋で、それが原因かなと思っていたんです。「俺、おかしいな? 閉所恐怖症かな」と疑いまして。そんなことがあって、いつもパニックの発作を恐れるようになりました。そのときは電車とかバスは乗れていたんです。いつのまにかう友達もいなくなって、孤立状態でした。大学に通っているときに、ふとこのときに発作が起きたらどうしようと言う考えがよぎりました。そしたら急に全身が硬直してきましてもう駄目ですよ。電車をすごく遅らせてしまう結果になりました。それ以降は乗り物は駄目になってしまって、ゼミで旅行があるとなっても自分は参加できないし。電車では通うのが無理だから、車で通うようになりました。不思議とそれは大丈夫なんです。ならない自信があるというか。

━そうなんですか。いろいろと症状が出ないようにするために努力されたんでしょう

しました。最初は内科に行きました。何がなんだかわからないから。そしたら、身体には異常はないって言うんですよ。「あれ?」と思いましてね。でも実際に発作がある。なんなんだとなって、いろいろと通いました。一人とても心理学に詳しい内科医の人がいて、心療内科を紹介してくれて、パニックだとわかったんですよ。薬を飲めば大丈夫と簡単にとらえていまして、でも駄目でしたね。自分なりに原因を考えると、やっぱりあいつらに徹底的にいたぶられたからだ、と思いまして。でも今更そいつらを殴ったところでどうしようもないし、救急車を呼んでもらった負い目もあって。トラウマを解消せねば、と言うことで催眠療法に行ったり、森田療法にも入院しました。夏休みを使って。もう就職活動どころではなかったです。

━テンションが高い人とか、自分を一気に追い込んでしまう人がなりやすい症状のようですね

そうなんですよ。だれも、自分がパニックを抱えてるとは思わないんですよ。でもなるときはなるんです。自分では悩むタイプではなかったと思っていたんですが、どこに落とし穴があるかわからないですね。

━それで症状が治まったのですか?

催眠って言っても自分は入れなかったんです。こりゃだめだと森田療法をやっても、どうしても発作が治まらない。でも絶対解決しなくてはいけないから全力でとりくみました。絶対治してやるって。でも症状が起きたら、すっかり飲まれてしまって、怯えてしまうんです。その変わり身は自分でも滑稽なくらいでした。でも深刻でしたけど。自分がやっと効果が出たのは岩波先生の神経症克服プログラムでした。合宿に参加しまして、発作が出てもいい覚悟が身に付きましたね。不思議とそうなると起きなくなりましたね。自分の原因となったことも、こだわらなくなりまして。一人で電車に乗って帰れたときはもううれしかったですよ。ああ、これで俺も人並みになれる。弱点がなくなったと思いまして。弱点があるとどうしても守りに入ってしまうんですが、それがなくなったとおもうと嬉しかったですね。

━神経症で苦しんでいる人に何かあればどうぞ

セラピストは誰でも同じだと思っていると、時間がもったいないです。自分に本当にあった先生を見つけるべきだと思います。あとは時間の勝負なのでぐずぐずしている暇は全くないです。そこを強く言いたいです。

━ありがとうございました


吉本みつる(仮名)さん

━自力で対人恐怖症を治されたとのことですが、なかなか一人の力では難しいものだとおもいます。すごいと思います。逆に悪化させてしまうケースが多い中で、どういうところを気をつかわれましたか?

そうですね。僕は薬飲んだり、催眠かかったり、森田もやってきたんですが、何をやってもらちがあかないんですよ。何が悪いんだろうとあるとき三日間寝ずに考えていてわかったんです。結局自分が悪いんだなという結論ですね。悩んでる人はみんな現状を呪っているけど、身から出た錆という部分が多いですよ。でもこれは悩んでいる人に言ってはいけないことですけど。結局甘えの精神構造が症状を長引かせているんですよ。なんて自分は甘いんだろう、甘かったんだろうとはっきり自覚して、それならば自分に徹底的に厳しくなろうと決意したんです。

━よく良くなった人に話を聞くと共通しているのが、「甘え」ですね。自分を突き放すくらいのメンタリティを身につけた人が脱出できているように思います。

でも、厳しく生きなくちゃいけないということはたぶんみんな気づいているんですよ。でも、いまの苦しさがある限り、自分や家族とか社会に甘えざるを得ないジレンマがあると思います。あと、そういうパワーがすっかり悩みに吸い取られてしまっているという・・・・

━なるほど、治りたいんだけど、行動の方が追っつかない状態ですね

そうです、そうです。対人緊張の例で言えば、人がとても苦痛だし不安の存在なんです。でもそれを避けていてばかりとか、傷つくことを避けまくっていれば、よけい悪化しますよ。でも、徐々に人は自分が思っているほどの怖いものではないと体験として知っていかないとなかなか好転しないとわかりました。そのためには行動が必要なんですが、でもとても恐怖だし不安だらけなんですよ。最初は特に。それに僕もいじめにあってきたので、人は怖いものだという刷り込みがあったので、人の中に飛び込んでいくとき恐怖がありました。

━そこをのりこえたんですね。かなり苦労されたと思います

そうですね。とても苦労しました。勇気が必要でした。でも僕が言いたいのは、100の恐怖が最初あったけれど、次の行動の時は90ぐらいになっていたんです。で、次は70ぐらい、どんどん動きやすくなってくるんですよね。上り調子だから人生が楽しくなりました。症状そのものはまだまだきついときもあったんですが、それまで何をやっても悪化するだけだったのに、こんどは良くなっているんですよね。あのときの決心は間違っていなかったととっても晴れ晴れしましたね。それがとっても自信になりました。

━自身は待っていたって生まれないですからね。逆に自分に厳しく突き放したことをしたとき、潰されてしまうおそれはありませんでしたか? そこが神経症で苦しんでいる人の共通点の一つだと思います

もちろんありました。それにそういう危機も何度もあいましたし。人から阻害されることに恐怖を持っていたんですけど、会社でそういう目にあいました。そのときはおちこみましたし、やっぱり、と。自分は駄目な人間だなと思いました。でもそこで、駄目な人間なら、もっと駄目になってやろうと思ったんです。だから、人からの悪口とかもっと言われてみようと思いました。びくびく怯えながらですね。でも、自分のことをいい方向に認めてくれたんですね。だから、すごく自信になりましたね。自分の陰口を言っていた人たちが、自分たちの仲間に入れてくれるようになったんです。そのとき、気づいたんです。あ、人ってそんなに悪いものではないなって。これは知識の上でのものではないから、一生自分についてくると思います。

━ほんとうにその気力や勇気を尊敬します

でも、冷や汗とか脂汗流しながらでしたけれど、とってもかっこいいものじゃなかったです。ヒーヒー言ってましたから(笑)

━吉本さんの話はとても悩んでいる人にとっての大きなヒントのような気がします。

そうですね。どこかで自分を甘やかさないものが必要だと思います。休みを取るときは休んで、というメリハリも

━最後に吉本さんから、悩みから脱出するために何かあればお願いします。

インターネットで良くなっている人とか良くなっていく人のページを見る機会があったんですが、みんな僕と似た考えを持ったというか気づいたんだと思います。それはカウンセラーやセラピストと一緒にやっていく方法もあれば、僕みたいな方法もあるし、いろいろと方法はあると思いますが、一つ言えることは、体験をしていくと言うことだと思います。人生はそんなに困難ではないという体験ですね。でも、そうなるにはやっぱり自分にすごく負担がありますし、押しつぶされるときもあると思います。でも乗り切れるものだったし、やらなければいけないものだと思います。自力で難しいなと思ったら、信頼できる人相談できる人の後押しでやっていけばいいですし、考えていただけでは何にも始まらないです。あと自分が強くなるためには、心の問題に悩まされないためには、自分にストレスをかすことです。積極的な意味で。それまでは人からストレスをかけられていただけですが、自分の意志でやれば、必ずストレスに強くなりますよ。毒をもって毒を制すっていいますし。頑張れとは言いません。頑張らなくては絶対駄目なので。でも乗り切れば必ず幸せは訪れますよ

━ありがとうございました


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(YUTAKA MATSUZAWA)

 

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