なぜ神経症になるのか?

           

重いトラウマが原因だと一般には思われがちだが、なるまでの過程は千差万別である。
まずじわじわと神経症になってしまう人と何か大きな自分では負担しきれない出来事が起こり、神経症に陥ってしまう人に大きく分けられる。
そこで育った環境が非常に重要になってくる。
統計によると、親の性格やしつけから何らかの「影響」を受け神経症になる要因となった割合は非常に高い。
ほとんどすべてが受けていると言っていいだろう。
取材をさせてもらった人もみな言及していた。
中には育ててくれた人に殺意まで持っている人までいた。
そこまでいかなくても、嫌悪の感情を持っていた人が多かった。
愛情を持って育ててくれたけど、そのやり方がまずかったとと言う人もいる。
どちらにせよ、赤ん坊から幼児期、思春期とまだ精神的に多感で敏感で不安定な時期に一番影響を与える人だ。
プラス面にせよマイナス面にせよ、人生を決定してしまうほど大きな存在なのだ。
また、過保護・過干渉な親ほど子供は悩む率が異常に高くなるということを、肌で実感した。

とはいえ、家庭だけが原因ではない。
直接的な原因となると、職場、学校、対人関係(圧倒的だ!)でのトラブルが多い。
家庭は、一応は自分を保護してくれる存在だ。そして逃げ場所でもある
だが会社や学校は残酷な場所である。生き馬の目を抜くことなど平気でやるのだ。
他人ほど怖い存在はないのは、神経症じゃない人でも同意してくれると思う。
ただし、人間ほど優しいものはいないとも言っておこう。
人間論になるが、どっちの要因も一人の人間に備わっている。どっちも真実だ。
こうなると、他人によって影響を受ける当人の問題になってくる。
そこで育った環境が重要になるのだ! 
人に虐げられても発憤して成功を収める人は多い。
危機に陥ったときこそ、パワーにあふれ、切り抜けれる人もいる。
だが、みんなそんな風にはいかない。
危機に際しても受け取り方が千差万別だ。
だから、過保護・過干渉な親に育てられた子供が、危機に際して、もろいのも合点がいく。
じゃあ、もろくならないために、厳格にしつければいいのか?というとそうでもない。
そういう子供は完全主義になり、他人の評価も気にしてしまう。視野も狭くなる。
だから、結局神経症になりやすい。
子供を育てることは、本当に大変だ。

対人関係での悩みは、何も対人恐怖症の人たちだけの専売特許ではない。何気なく暮らしている人も、一番の悩みは対人関係だという。
だから、鬱病の人、パニック障害の人、不眠症や摂食障害の人もみな例外なく対人的な問題を抱えて生きている。
抱えきれなくなったときに発症してしまうだけのことだ。天災や事故でも神経症になる。
だが、日本でも、だいぶ、その後の心のケアができてきている(まだまだ不十分だが)。
心のケアが初期段階で受けられないのが、対人関係の悩みである。
一方で、すぐ心のケアを叫ぶのは、社会を軟弱にすると言う厳しい意見もある。
的を射ているものもあるが、社会のシステムとしてもっともっと確立していくべきだと思う。
また、心の悩みを打ち明けやすい雰囲気作りも重要だろう。
私がことあるごとに指摘しているが、鬱や社会不安障害の広告がある。
「薬を売って儲ける」 という商売臭がすること以外に、鬱などの理解を深めることには大きな役割を果たしている。
商売とは別に、雰囲気作りを積極的に作り出してもらいたいものだ。
また、モノ書きの重要な仕事だとも思う。
心が傷ついたときに、すぐ気軽に相談できるところがあればそれ以上の悪化を免れる。

(YUTAKA MATSUZAWA)

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